はじめての幻聴
悪夢から目が覚めても、その夢の声が続いていた。
恐怖を感じた時は、すぐに調べて仮説を立てるようにしている。おそらく、これは幻聴と呼ばれるものである。インターネット曰く、よく見られる症状らしい。少し安心した。ありがとうインターネット。
動悸がとまらない。
わたしは、あの日受けた傷に加えて、後日さまざまな人から語られた言葉にも、はげしく傷ついたのだと理解した。彼らの声が聞こえてしまったのだから。
やはり二次被害というものは、痛い。
自分から透明な血も流れていたことを、どうやって伝えられたらよかったのだろう。こころの傷は、目に見えないから、正確に伝えることが難しい。自分の言語化能力の拙さが悪い。
わたしが悪い。
わたしは怒りの行き場がないのだ。
夢のなかで責める声には、自分が混じっていた。
「どうして復讐しないのか」
そう言われても、戦う体力がない。
あの出来事を語りなおす必要がある。
それが心底恐ろしい。
それは、いけないことなのだろうか。
この前、子どもたちがダンゴムシを手渡してくれた。
あの感触。あの優しさ。あの光。
生命を手のひらで大事にしまい込む、慈愛の眼差し。
わたしは本当に、あの子たちの瞳に救われているのだ。
それを思い出して、もう少し眠る。
眠らなくては。