とても美しいものを見た①
2019年5月24日15時01分。
電車。
私は性懲りも無く大学を遅刻していた。
東海道線はもうすぐ戸塚に到着する。
する事もなくぼんやりと立ち、電車の広告を見ていた。
換気扇を熱帯魚が出たり入ったりしている。
__宇宙と深海は繋がっているのではないか。
だとしたら、我々は境界線上に立っているのか。
こんな風に感じている人はいるだろうか。
くだらない妄想ばかりしていた。
そして、新人社員と談笑している、ベテランキャリアウーマンの御御足に見蕩れていた。
しかし、時折、2人は座席に視線をやる。
女性の綺麗に引かれたアイブロウは歪曲する。
男性は朝整えたはずが零れる前髪をかきあげる。
そこで私も気づく、電車内のすえた匂い。
『あ、ホームレスだ。』
ホームレスの男性が、座席を二人分占領していた。ぼんやりと、しかしなにか威嚇するかのように、周囲の人を見開いた目で眺めながら。
目をそらす。
瞬間、私は自分の心に影が差すのを感じた。
しかしそれを考えるのをやめる。
その影を感じるのは、失礼だ。
でも、何に失礼なんだ?
電車は戸塚に着いた。
2019/05/24