NARRATIVE

闘病日記と化した雑記です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

イヤホンをなくした世界

イヤホンをなくしてから一週間が経った。 泥酔してポケットから転げ落ちたのか。それとも、どこぞのお店にでも置いてきたのか。分からない。 そういえば、元々常用していたイヤホンを、酔っ払ってなだれ込んだ友達の家に置いてきている。先にあちらを取りに…

居酒屋にて。

その人が餃子をテイクアウトする背中を見ていた。どうしてそんなことをするのか、理解ができなかった。一緒に飲んでいて、そんなことする人、はじめてだった。 「持って帰るんです」と、照れたように笑っていた。その隣に座っているみたいに置かれたプラスチ…

理解には遠く及ばない雑記

「駆け引き」の意味も知らない人々が、誰かと幸福になりたいと嘯く街中で、わたしはひとり、心底、君に会いたいと思う。君に会って、この耳に流れ込む雑音が、この目に映る無造作な、あまりにも無造作な崩壊が、すべて消え去ればいい。安い酒が悲しみの身代…

二代目はクリスチャン

言葉にならない。錦糸町までの帰り道にある吐瀉物は、わたしのものだ。あまりにも烈しい感動によって嘔吐してしまった。こんなこと生まれて初めてだ。マスクがいろんな液体でベチャベチャになった。 稚拙な言葉で語りようもない。 でも言葉にしないと死にそ…

こころが煮こごりになっても

肋骨の隙間に愛が挟まってとれない どうにも不在のなかに存在があるようだ 痛みが味覚のない過去を知らしめる 自分の耳からしか心臓の鼓動は聞こえない ここからじゃ見えない 遠くから慣れ親しんだ闇がみている 指先から後悔が錆のようにひろがる もうすぐ唇…

お別れの向こう側から

愛犬との闘病生活が、突然に終わった。 その知らせを、私は外出先で受け取った。電話をかけてくれた妹は、なんだか落ち着いた口調だった。テレビ通話に切り替えて遺体を確認しても、それは現実味のない風景だった。どこも動いていないのだけれど、お腹が上下…

芥川だって35歳まで頑張ったんだから

愛犬が癌になった。 いま、余命宣告を受けている。 でもまだ生きてる。 わたしは独特な言語感覚をもっている。 さんざん指摘されたので、事実なのだろう。 それは今より昔の方がよっぽど酷かった。 だから、言葉のいらない動物には随分癒された。 はっきりい…

詩にも満たない③

水平線の光を目指して歩けば歩くほど 浅瀬で溺れるような感覚がある どうしていつも上手くいかないんだと 泣いているあなたが見える深夜に 撫ぜる権利をもたぬわたしと 遠慮ない無礼者に囲まれるあなたが見える海岸に ほんとうの共感者は静かに見つめている …

鯨と僕 (変わっていくということ)

自分だけが毎日、毎朝、違う人間として生まれ変わっている気がする。 これは1人で目覚めた時だけ起こる。 隣に人間が寝ていると、なんとなくその人の認知に合わせた形として振る舞っている。 けれど、サメのぬいぐるみを抱きしめて目を開くと、「わたし」は…

横浜美術館「トライアローグ」に寄せて

横浜美術館「トライアローグ」 ド頭にお目当てのピカソが展示されていて驚いた この3作品の中では、画像左上の作品が見たかったというのもこの作品は、いわゆる「青の時代」のものだからだ ピカソは、1901年に、親友の死を経験するそれは親友が呼び寄せたパ…

不眠症と僕

僕は不眠症だ。 高校生頃には睡眠障害に悩まされていたように思う。 いや、正確にはもっと前かもしれない。中学受験をしたあたりで、プレッシャーと不安から寝つけなくなった。そう考えると、人生のほとんどを不眠症と生きているのだ。 どうせ携帯をいじって…

Étude op.10 nº3

昨日手紙を出した彼女に今日会った 真摯に綴った言葉は 今日の行動で嘘になった だったら初めから肉体なんて 存在すべきじゃない 精神だけでやりとりをするべきだった けれど肉体がなければ言葉は生み出せない 出会いもなかった こんな矛盾を抱えて生きてい…