AII IN GOOD TIME.
ここ1週間、いつになく鬱屈としていた。
なにかに、誰かに向き合ってるうちは誠実なんだけれど、それ以外の時間が壊滅的で、ギリギリ人間を保てていないような有様だった。
みっともないんだけどさ。
こういう言葉を投じるのは、
同じような思いをしている誰かの心に、
ただその人のために、
この在り方で今も生きているということを示したいという気持ちがあるんだ。
諦めないとか、くじけないとか、
そんなことじゃなくていい。
くたびれながら歩いている人間がいてもいいんだよ。
(そしてそれを未来の自分に伝えたい)
死ぬまで生きていこう。
時々精神が引きちぎれそうになる。
その度に呼び戻してくれる人がいて、
解いてくれる人がいて、
なんとか生きてこれた。
人となにかを行う。好きな人に会う。
些細なことでいいから、人と関わる。
くだらない話で笑う。
そうすると心が少し楽になる。
でも「じゃあね」と笑顔で手を振った直後。
大きな獣が私におしかかってくる。
獣臭さに充たされる。
凄まじい勢いで心が荒んでしまう。
瞳孔が少しだけ開かれる。
おまえみたいな人間が
そして突然日本刀のような切れ味で、
私から「なにか」が引き抜かれる。
(ほんとうにそういう感覚がある)
それを失った衝撃と失血した体感に支配される。
歩き出す。
喪失感と虚脱感を連れて歩く。
明るい場所に行きたいと願う。
コンビニはまさにConvenienceな明かりだ。
ストロングゼロを買う。
そしてLINEする。ありがとう。
楽しかった! と微笑むスタンプを見守る。
良かった、楽しんでもらえた。
でも、本当に?
分からない。無理をさせているのだろうか。
過敏な精神は、お酒の力で弛緩しだす。
ああ、楽になってきた。なぁ。
あてどなく放蕩する。
ゴルゴタの丘を歩むキリストのような気持ちで夜の街をさまよう。静謐な場所を求める。
気がつくと海を見ていたりする。
ザザザ、ザザ、ザ、ザザザザザ……海の音だ。
ああ、海に来た。故郷の音だ。
だんだん落ち着いてきて、泣ける余裕がうまれる。
どうして生きているのか分からなくて。
こんなに秘密を抱えてしまった。
別に何があるわけでもない。
ただ、生きていることが遣る瀬無い。
考えすぎた思想は私の意識を振り切って、
いきたくもない遠い場所まで私を運んでいく。
もうやめてくれ。許してくれ。
そう思っていても、罪悪感は容赦なく蝕む。
最後の審判が始まるんだ。
心のドアを叩く音がする。
暗い影の存在。
また過去が私を審議する。
もう会えない人の声と、傷つけた人の嘆き。
生きててごめんなさい
心の中でつぶやく、そして朝が来る。
朝日を目撃する。
魂がふるえる。
結局のところ。
人様に向ける顔などもちあわせていないのだ。
必死に取り繕っても、
私からは腐った人間の匂いがしている。
自分程度の人間に会わせるのが申し訳ないな、といつも思う。もっと有意義に人生の時間を使ったほうがいい。
映画を見ている時だけは静かな心になれる。
なにかに没入して、その海に浸かっている時。
胎内にいるように、私の精神は安心の世界に宿る。
だから、映画パラサイトのとあるシーンで、
1人で映画館で泣きじゃくってしまった。
こびりついた匂いからは逃げられない。
その気配からは。染み出しているんだ。
映画館の鏡を見た。大嫌いな自分が見ていた。
海が見たい。
わたしは生きるのが下手だ。
ほんとうに下手だ。
人生はまるで執念深い借金取りのようだ。
なにかを引き起こせば、必ずツケを支払わなければならない。自己破産という逃げ場は考えたくもないけれど、時々よぎる。
でもそうはしたくない。
したくないって思えている。
まだその選択は選ばなくてもいいんじゃないかと。
こんな自分が生きる場所はどこかにあるんじゃないかと。みっともない願いを捨てられないまま。
救いはない。
でも希望はある。
それはたぶん、愛のようなもの。
私はこの世界の芸術が好き。
そして、関わっていたい人がいる。
だから生きてもう少しだけ目撃していたい。
ただそれだけの単純な動機で生きている。
夜を這い回って、転んで、喚いて、涙が枯れきった乾いた目を薪にして、命が燃えている。今も。
愛があれば。
愛さえあれば。
生きていられる。
生きていたいよ。
私は生きたいんだよ。
愛があれば。
愛さえあれば。
人生は続けられる。
生きるということは誰に強要されたものではない。
選択権はいつも自分にある。それを忘れるな。
そして人生は続く。
2020/02/10 御法川わちこ