眠りはあらゆる傷を癒すのだろうか?
傷ついた時は、なかったことになるまで眠る。
これが私の処世術だった。
そうすることで、大概の傷は眠りの向こう側で癒えた。
多い日は18時間も眠ってしまうことがあった。
母からは、仮死状態のようだと言われた。
眠りは神秘的だ。
皮膚も、病も、目が覚めると変化している。
眠っている間、魂はどこか遠い世界に運ばれているのかもしれない。夢のなかで別の物語を生きることで、現実の代替としているのだろうか?
ユングに思いを馳せる。
神聖な夢。
その神秘をもってしても。
この傷だけが、どうしても治らない。
追ってくる。
夢が侵される。
中途覚醒が止まらなくなった。
傷が癒えないから、他人を信じられない。
新しい一日が始まらない。
サナギは殻の中で溶解する。
それが生まれ変わるために必要なのだとしたら、わたしの内側が瓦解するようなこの苦しみも、必要なことなのだろうか。すべてが過ぎ去ったあと、また新しく生きてゆけるのだろうか。
だめだ。
もう少し眠ろう。