NARRATIVE

闘病日記と化した雑記です。

演劇について④役者の悪夢

 

 

悪夢というのは、その人の個性が出る。

 

社会人だったら、仕事でのミス。

学生だったら、成績に関するミス。

詐欺師だったら…

犬だったら…

 

ね。

 

 

とにかく、役者の悪夢というのはこんな感じだ。

 

 

 

私は、青少年センターHIKARIの中。

 

何故かわかる。

今日が、公演初日だということも。

前情報は完璧だ。

 

暗闇の中きょろきょろと辺りを見回す。

手を伸ばすと、しっかりした感触がある。

ここはどこだろう。歩き出す。

おそらく、舞台らしき骨組みを辿る。

木造の匂い。これは、箱馬の匂いだ。

 

それは、突然始まる。

 

眩しい光。

反射的に手を顔の前にやる。

これはサスに当てられているのだな。

いつの間にか、舞台のセンターに立っている。

 

眩惑。

 

そして、沈黙。

 

客席が見えてくる。

目の前は、満員御礼。

私の第一声を待っているようだ。

 

袖を見る。

 

何故か、過去の共演者がいる。

(あんまり絡んでなかった人が多い)

心配そうに、或いは不思議そうに私を見つめている。

 

冷や汗が出る。

 

台詞は、勿論入ってない。

何を喋ればいい。分からない。

喉が乾いていく。

 

袖から誰か出てくる。

 

あ、あれは、神奈川でも指折りの俳優さんだ。

こんな所で共演できるなんて。

もっとちゃんと練習してくればよかった。

 

謎の後悔が脳裏をよぎる。

いや、そもそも、なんでこんなことになってるんだ。

 

俳優は、唐突に猛烈な勢いで芝居を始める。

さ、流石名優、淀みない台詞回しだ。

お前のターンだ、と、睨む目すら凄みがある。

 

私はとりあえず、過去の台詞を読み上げる。

適当にアドリブを交えながら、必死に。

俳優も負けじと応戦してくる。

 

いちおう、成り立っている、のか。

 

気がつくと、いつの間にか舞台は幕をおろしている。

客出しには、高校時代の友人や好きだった人などがいる。

みんなニヤニヤと私を見ている。

 

そんな目で見られても、仕方ないだろう。

 

瞬きをすると、家にいる。

 

何の気なしにTwitterを開く。

神奈川でも指折りの俳優が、ツイートしている。

 

「本日はお越しくださりありがとうございました。こんなこと言いたくないけど、プロとして皆さんに謝罪しなきゃいけない。ひどい芝居でした。」

 

続々とリプライが来ている。

 

「神奈川でも指折りの俳優さんは悪くないです! むしろ、相手役の人が謝るべきだと思います!」

「確かにひどい舞台でしたね。仕事選びましょう」

「神奈川でも指折りの俳優さんありきで成り立っていたと思います。ゆっくり休んでください」

 

私は泣いた。

 

 

ここら辺で目覚める。

あれは、夢だったのだ、と気づく。

 

 

私は、泣いた。

 

 

 

 

 

 

こんな感じです。

 

 

 

いかがだろうか。

 

 

 

 

 

2019/06/09 御法川わちこ