NARRATIVE

闘病日記と化した雑記です。

不眠症と僕

 

 

    僕は不眠症だ。

 

 高校生頃には睡眠障害に悩まされていたように思う。

 いや、正確にはもっと前かもしれない。中学受験をしたあたりで、プレッシャーと不安から寝つけなくなった。そう考えると、人生のほとんどを不眠症と生きているのだ。

 

 どうせ携帯をいじっているから眠れないだけだ。

 カフェインが悪い。お風呂に漬かってる?

 などなど、さまざまな要因を考えたし、指摘もされた。

 しかし、どうにもこうにも、眠れないのだ。

 ストレス要因あるなしに関わらず。

 

 

 

 症状は、お酒を覚えてから悪化した。

 意識を強制シャットダウンできることに気がついてしまったのだ。飲酒量は増える一方だったし、寝酒もしょっちゅうだった。そしてなにより、お酒を飲む大人には、眠らずに過ごす人がたくさんいる。

 ひたすら長い夜を乗り越えてきた僕にとって、孤独を紛らわす手段があるというのは、非常に嬉しかった。見事にハマってしまって、身体からアルコールを抜けない日が続いたこともあった。

    ちなみに今は、お酒による破滅的行動は極力控えている。そんなことを繰り返しても、何にもならないからね。

 

 

 

 思えば、祖母も睡眠薬を服用している。詳しいことは分からないけれど、遺伝的要因もあるのかもしれない。

 

 今や不眠症は、日本人の5人に一人という割合なのだそうだ。その実態の割には、なかなか表立って話す人は少ないように感じる。自分以外に、理系と文系両方の大学院に通った変態の友人しか出会ったことがない。……これは明確に偏見だけれど、夜を生きている人間は独自の思考をもっている気がする。自分と対話する時間が長いからかな。月の光を浴びているせいかもしれない。

 

 とにかく、不眠症について少しだけお話ししようと思う。あくまで自分の所感だ。ただ、不眠症の人々は、多かれ少なかれ辛い思いをしているので、実際に告白されたら優しく理解を示してほしい。(けれど、あんまり優しくすると夜中に連絡が来て大変になることもあるから、そのさじ加減は友好度による)

 

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(眠れない夜は、主に本を読んでいる)

 

 

 眠れないという症状が、どんな感覚なのか。

 

    精神が引き伸ばされる、という言葉がよく言われる。

 そうかもしれない。不思議と思考も冴えてしまう。

    僕の場合は、自己嫌悪がひどくなる。

 

    睡眠というのは、一日の記憶を整理して、リセットする機能がある。しかし、満足に眠れないと、それが上手くいかない。ありとあらゆる時系列がごちゃごちゃになって襲いかかってくる。過去の失敗や、将来の不安が一気に押し寄せてくるのだ。これが地獄の苦しみみたいに感じる。

 

     チェンソーマンで、宇宙の悪魔という存在がいる。そいつの能内は、相手にこの世の理を注ぎ込むことで発狂させてしまうというものだ。インディージョーンズでもそんなシーンあったな。クリスタル・スカル? とにかく、感覚としてはそんな感じだ。

 

     時間旅行が落ち着くと、今度は身体に影響が出てくる。頭痛、吐き気、倦怠感や骨の痛み。食欲不振や目の疲れなど、至る所に弊害がある。地味にまぶたの痙攣がしんどかったりする。

 

     個人的には、思考がまとまらなくなるのが1番辛い。人の話を聞いていても、短期記憶がもたないので、なんの話をしているか分からなくなってしまったり、そもそも集中力が持続しなくなる。たいてい、言いたいことの1000分の1も話せずに終わってしまうので、帰ってから布団を転がり回って暴れなきゃいけなくなる。

 

 

 

     それで、ここからが大切な話だ。素人意見で申し訳ないのだが、不眠症と付き合うコツみたいなものを教えたい。あくまでコツなので、自分なりに藻掻いて戦われている方で、いい意見があったらご教授願いたい。

 

      僕の場合は「睡眠を諦める」ことにした。要するに、寝よう寝ようと不眠症に抵抗するから、更にストレスになってしまうのだ。対策は簡単。眠れない自分を認めてしまう。そして、「まあ、そのうち気絶するだろう」くらいの感覚でいること。そうすると、不思議と落ちている確率が上がった。

 

      ただ、いくら眠れなくても、一日8時間は布団に入って横になるよう心がけてみてほしい。飲み歩いたりしてはいけない。とにかく身体を休めるだけでもいいから、体温を上げる意識をすること。

 

       そしてSNSで今まで出会った人々をサーチするのはやめて、すぐさま携帯からアンインストールすること。どうしても気になる人や事情がある場合は、パソコンを操作する時だけチェックするようにした方がいい。(これは信じられないくらい有効!)

 

 

     あとは、結局不安感が原因だったりするので、こころを許せる人と一緒に夜を過ごすのもありだと思う。それでマシになっていた時期もあった。寝落ち配信を聞くなんていうのも素敵だ。僕はよくラジオを聞き流している。

 

      読書もいいと思う。特にエミール・シオランは、僕の不眠症ライフを最高のものにしてくれた。シオランも眠れない人で、自身の思想を長い夜によって熟成させた。そして、その苦痛を実に見事に活写している。誰にも共感を得られず苦しんでいる人は、ぜひ読んでみてほしい。僕はとても救われた。

 

     意外に思われるかもしれないけれど、整体に通って他人に身体を解してもらうのも有効らしい。慢性的に身体が緊張して強ばっているから、という理由もあるのだそうだ。自律神経の乱れが原因だとしたら、首の横の筋肉を入念にモミモミすると少しマシになるかもしれない。僕の整体の先生曰く、眠れない人は首が凝っているのだそうだ。

 

     不眠症は誰にでも起こりうる病だ。特に、ストレス社会を生きる人々とは、切っても切れない関係なのかもしれない。もし、ほんとうに辛い時は、医療機関を受診するのも大切だ。あなたが眠れないのは、精神病や不安障害の合併症である可能性もある。

 

 

 

     いろいろと経験論を語ったけれど、眠れないという事実は、当人にとっては信じられないほどショックだ。身体へのダメージも大きい。もし、これを読んでいるあなたが、突然不眠症になったら、決して自分を責めないであげてほしい。頑張り屋さんだから、気を張っているから、休み方を忘れてしまっているだけなのだ。

 

     ホットミルクを飲んで、お風呂に入って、ストレッチして、マインドフルネスを試みて。それでもダメだったら、諦めて眠れない夜を楽しもう。

 

     とにかく、悪いことを考えそうになったら、今に集中することだ。呼吸を意識する。無駄に未来や過去のことを考えると憂鬱が襲ってくる。夜に考えるアレコレは、ろくな事がない。ならばいっそ、時間の流れに身を任せて、ぼんやりと過ごしてしまえばいい。

 

     明るい映画を見たり、ドラマを見て泣く。感情を発散させながら、アイスを食べるんだ。もしも絵が好きなら、絵を描くのもいい。自分の好きなことをして、自分の機嫌をとってみよう。最初は上手く甘やかせないかもしれない。明日が不安で仕方ないかもしれない。それでも、ひとまず一切合切飲み込んで、自分を許す時間を作ってみてほしい。ひとしきり気が済んだら、また横になる。大丈夫。きっとすべてうまくいくはずだから。

 

     今日のエントリーはこれでおしまい。

     すべての人が、素敵な夜を過ごせることを願う。