芥川だって35歳まで頑張ったんだから
愛犬が癌になった。
いま、余命宣告を受けている。
でもまだ生きてる。
わたしは独特な言語感覚をもっている。
さんざん指摘されたので、事実なのだろう。
それは今より昔の方がよっぽど酷かった。
だから、言葉のいらない動物には随分癒された。
はっきりいって今もそうだ。
この先、そのような存在を失うんだなあ。
言葉をもたない存在に、どれだけ救われたか。
どうにかして代わってあげたい。
毎日、悲鳴のような喘鳴を聞きながら思う。
受けとめられるだろうか。
この子の身体を愛しているわけではない。
魂を愛している。
肉体が滅びても、不滅なものはあるよ。
分かってる。
けれど怖い。
それ以外に言葉がない。
自分が生きるのに疲れているのに、それ以上に苦しんでいるこの子を引き留めちゃいけないね。分かっちゃいるけど遣る瀬ない。
この子の魂が肉体から離れて、きっとなにかが永遠に変わるんだ。
有限のなにかを喪失する。
無限のなにかを獲得する。
詩にもマトモな文章にもならない。だから理解もされない。何の価値もない自分の言葉を情けなく思う。それでも感情を形にするためには言葉に変えるしかない。
この子に伝えるためにどんな手段があるのだろう。
あなたがどれだけ大切で、誰にも心を開けなかったわたしを支えてくれたか。
ありがとうありがとう。
もう少しだけ一緒にいようね。
大丈夫だよ。
大切なものは、大切にできるうちにするから。
この気持ちを忘れないように残しておこう。
意識が永遠に残るために、言葉がある。
わたしはそう信じてる。
真実を大切にしたいだけだ。
この悲しみをきちんと表現出来ているのか分からない。
もう起き上がるのも厳しい。
それなのに毎晩一緒に眠ろうとしてくれてありがとう。
まだ心配をかけているのかもしれない。
弱くてごめんね。
第一発見者はわたしだったらいいと思う。
目を逸らさずにいる。
今日も寝ようね。