居酒屋にて。
その人が餃子をテイクアウトする背中を見ていた。どうしてそんなことをするのか、理解ができなかった。一緒に飲んでいて、そんなことする人、はじめてだった。
「持って帰るんです」と、照れたように笑っていた。その隣に座っているみたいに置かれたプラスチックのなか、みちみちに詰まった餃子。
『愛している人がいるんだ』と、思った。
魂が震えた。
こんなふうに、愛を感じることがあるのか、人は。
すごく美しいものを見た気がする。
わたしも、そういう人になりたいよ。
最近は、なにも。
ちゃんと愛せていないな。
反省した。
じぶんが消費するばっかりで。
約束も守らないで。
それでいいと思っていたんだな。
無責任なほうが、楽しいから。
どうして餃子が羨ましかったんだろう。
自分だけ楽しめればいいと思っているうちは、手に入らない幸せの形だったからだな。
生き方を改めなきゃいけない。
なにをどのように愛するのか。
わたしはこの人を師と仰ぐことに決めた。
餃子が冷える前に、帰ろう。